プレスリリース

平成27年7月 9日
国立研究開発法人水産総合研究センター
アマモ場の生態系はヨコエビや巻貝などが支えていることを世界規模で証明
  • 北半球を対象とした国際的な研究により、アマモ場の保全に小型無脊椎動物の多様性が大きくかかわっていることを初めて証明しました。
  • 小型無脊椎動物も含めたアマモ場全体の生態系を管理することにより、アマモ場の保全・再生計画への寄与が期待できます。

アマモ(Zostera marina)は、多年生の海産顕花植物で、その群落であるアマモ場には、栄養塩を吸収して水質を改善したり、森林のように二酸化炭素を吸収・固定したりする機能があります。また海のゆりかごとも呼ばれ、生物が育成する場所としての重要な役割を担っています。しかし、アマモ場は世界中で減少しており、保全対策が必要とされています。

アマモ場の保全対策を考えるため、水産総合研究センター瀬戸内海区水産研究所は、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター厚岸臨海実験所とともに国際的な研究グループに参画しています。このグループにより、北半球の温帯~亜寒帯に拡がるアマモの分布域をほぼ網羅する世界15 ヵ所で大規模な野外実験を行いました。その結果、温帯、亜寒帯を問わずヨコエビや巻貝などの小型無脊椎動物がアマモを覆ってしまう藻類を食べることで、アマモの成長を促すとともに、アマモが枯れるのを防いでいること、その効果は小型無脊椎動物の種類が多いほど高くなることを初めて明らかにしました。

アマモ場の小型無脊椎動物は魚類の餌としても重要であり、小型無脊椎動物がいないアマモ場では、アマモ場本来の機能が著しく低下していることが推定されます。本研究の成果はアマモ場の保全に大きく寄与することが期待されます。

これらの成果をまとめた論文が国際科学誌Ecology Letters 2015 年7 月号に掲載されました(先行電子版は5 月17 日にリリース)。


なお、本成果の一部は、科学研究費補助金(基盤研究B海外学術)「環太平洋海域におけるアマモ場生態系機能・サービスの地域変異性の解明」(平成24-27 年度、研究代表者:堀正和、課題番号:24405012)によるものです。


別紙参考資料

本件照会先:
国立研究開発法人 水産総合研究センター
瀬戸内海区水産研究所生産環境部 堀 正和 TEL:0829-55-3430
瀬戸内海区水産研究所生産環境部 首藤宏幸 TEL:0829-55-3493
瀬戸内海区水産研究所 業務推進課 吉田勝俊 TEL:0829-55-3406