プレスリリース
国立研究開発法人水産総合研究センター
- ・クロマグロの全遺伝子を解析可能なDNA チップを開発しました。
- ・このチップにより、クロマグロの生命現象を迅速に解析できます。
太平洋クロマグロ(以下「クロマグロ」)の天然資源減少に伴い、人工種苗による安定的な養殖生産が期待されています。しかしその実現には、親魚の産卵制御、生残率の向上、ウイルス感染症対策、共食いや衝突死の防止など、課題が多く残されています。生物の活動は、遺伝子の情報からタンパク質が作られることで制御されるので、これら多くの課題を効率よく解決するためには遺伝子に着目し、これらの問題に関連する遺伝子が、いつ、どこで、どのように働くかを調べる手法が有効です。
水産総合研究センターを中心とした研究グループは、すでにクロマグロ全遺伝情報から合計26,433 個の遺伝子の存在を予測しています。今回、すべての遺伝子の働きがわかるように、各遺伝子の遺伝情報であるDNA をスライドグラス上に高密度に貼り付けたDNA チップを開発しました。クロマグロ組織や細胞から採った遺伝子の転写産物(メッセンジャーRNA)が、このチップ上のどの遺伝子のDNA とどれだけ結合したかを調べることで、その組織での各遺伝子の発現動態が分かり、成熟、仔稚魚の発生過程、栄養要求、生体防御等に関わる遺伝子の働きが推定できます。それらを基にした早期産卵技術、優れた配合飼料、ワクチンなどの開発からクロマグロの養殖技術を向上させ、その安定的な養殖生産に貢献できると考えています。
この内容は、当センターと北里大学が平成25 年11 月に共同開催した国際水圏メタゲノムシンポジウムを基に新たな投稿を加えて企画された、今年2月1日発行の国際学術雑誌Gene 特集号(Special issue: Marine Genomics)に掲載されます。このDNA チップの基となった全遺伝子情報は、http://nrifs.fra.affrc.go.jp/からダウンロードできます。
なお、本成果の一部は、平成23〜27 年度水産庁委託事業の「クロマグロ養殖最適親魚選抜・確保技術開発事業」により得られたものです。
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